地下鉄北南線の工事現場にて (from updateNL)
5月28日、地下鉄北南線工事現場を一般に公開する「オープンデー」に行ってきた。日本語だと南北線と言いたくなるところだけど、オランダ語では「北南線」(Noord/Zuidlijn)。
2003年、多くの市民が懐疑的な眼差しで見守る中、アムステルダムでは「地下鉄北南線」の工事が始まった。工事完成の予定は、当初の2011年から、いやいや2013年、さまざまなアクシデントがあったので更に延期で、願わくば2016年、、とどんどん遅くなっていく。おそらく正確なメドは現時点ではついていない。
アムステルダムと言えば、軟弱な地盤に木杭基礎を打ち込んで建設した街。その上、中世の歴史的建造物が並ぶ旧市街の地下に大きな穴を開けて地下鉄を通そうというのだから、市民としても「何事もないように」と祈るしかない。現に陥没した一角があり、いくつもの歴史的建造物が壊れてしまった。
予算も大幅に超過している。市民税徴収の度に自分たちも南北線に対して相当額を払っていることを再認識させられる。
とはいうものの、北南線当局が毎年5月の最終土曜日(付近)に行う「オープンデー」は恒例の楽しみのひとつ。今年はアムステルダム中央駅の近くから、トンネルの一部も見学できた。
高所恐怖症の私にとっては、何十メートルも地下に下る工事用の階段を行くのは決死の覚悟だったが貴重な光景を見ることができた。
「でも」とふと思う。
地下鉄が完成しても、この街はきっと自転車移動が一番だ。
それに緊急時の避難方法などについて、消防局からさまざまな難がつけられていたけれど、あの問題はすべて解決したのだろうか、などと考えると積極的に地下鉄を利用するようにはならないだろう。
それにこの工事のおかげで街中は一大工事現場と化した。いつ終わるかわからない街をあげた大工事。
2004年に生まれた息子が成人するまでに終わるだろうか? 彼の記憶には、ホームタウンは「地下鉄工事でひっくり返った街」と刻まれるのだ。
それでも、オープンデーだけは毎年欠かさず見学しようと思う。「こうして現場を定期的に開放し、良いことも悪いことも積極的に公表する当局のPRストラテジーにはとても好感が持てる」と、称賛したくなる戦略だ。否定的なイメージを捨てきれないシニカルな市民感情を、「パブリック・リレーションズ」でどこまで挽回できるか。それもこの地下鉄工事のみどころのひとつである。