The empty chair by Maarten Baas

The empty chair by Maarten Baas

6月6日、デン・ハーグのランゲ・フォールハウトで、中国アーティストの作品を集めた展覧会「空の下のデン・ハーグ」(Den Haag Onder de Hemel)が幕を開けた。
会場のギャラリー「プルクリ・スタジオ」と、その建物前にある広場には、たくさんの中国アートが並んだ。
6日のオフィシャル・オープニングには中国大使も列席。中国とオランダの文化交流を祝福した。

一般公開は翌日の7日から。新聞等でさまざまな前評判があったので早速見学に。

ところで、「国際人権救援機構」の名で知られるNGO「アムネスティ・インターナショナル」(以下A・I)は、今年設立50周年を迎えた。
A・Iは、芸術家アイ・ウェイウェイを逮捕拘束するなどの中国政府の人権倫理に厳しい批判の目を向けている。

このA・Iが、オランダの先鋭デザイナー、マールテン・バースに、ある作品の制作を依頼していた。
昨年のノーベル平和賞を受賞した中国人著作家リウ・シャオポーに敬意を表する作品で、タイトルは「ジ・エンプティ・チェア」。
ノーベル賞授賞式の日、投獄中で出席が叶わなかったリウ・シャオポーの席が空席のままだったことを表現した作品だ。

座面から高く延びていく背もたれが、まるで自由へ向かうはしごのよう。
バースらしい奔放な造形が、あやうさと力強さを同時に表現しているようにも見えた。
A・Iはこの作品を、中国の芸術家やジャーナリスト、活動家、そして彼らを守ろうとする弁護士たちの人権が政府によって蹂躙されていることの象徴とし、中国における人権擁護のアイコンとしようとした。

この作品もまた同展の展示作品のひとつで、一般公開前日6月6日から会場に展示される予定だった。

だが、中国大使が参列したオフィシャル・オープニングの日に、ギャラリー内に「ジ・エンプティ・チェア」の姿はなかった。
理由はもちろん、中国とオランダとの友好に波風を立てないため。
しかしこの「不在」は逆に報道の注目を集め、各所でニュースになった。

6月7日、会場を訪れた多くの報道関係者がまず目指したのは、「ジ・エンプティ・チェア」。作品の前には撮影順番待ちの列ができた。
この時撮られた写真がどこかのメディアで紹介され、「中国大使参列のオープニングでは展示されなかった」と伝えるのだ。

周りのカメラマンたちに、「君は中国人か?」と聞かれた。
「違う」と答えると、みんな残念そうにした。
マールテン・バースは中国でも人気があるが、この作品が中国で紹介されることはあるのだろうか・・・?

アイ・ウェイウェイは、4月3日に北京空港で拘束されて以来、所在が明らかにされていないらしい。
リウ・シャオボーは、国家政権転覆扇動罪で懲役11年。
現在も服役中だ。