Rijksmuseum アムステルダム国立美術館 2

(←アムステルダム国立美術館1〜間もなくオープン〜)

アムステルダム国立美術館が、その扉を開けたのは1885年である。

設計デザインを手がけたのは、ピエール・カウペルス。アムステルダム中央駅の設計者としても知られる建築家だ。
レンブラントの最高傑作「夜警」を飾る祭壇をイメージした設計というから、文字どおり芸術の殿堂である。

カウペルスは、ネオゴシックやネオルネッサンス様式が融合した建物の趣を、インテリアにも反映させて統一感を出すために、自ら壁や天井を彩る装飾画も手がけていた。
だがその鮮やかな装飾は、前世紀のミニマリズムの流行の中で真っ白に塗りつぶされてしまう。
「それは、建築とインテリアを結びつけていたリンクを断ち切ることと同義だった」とは、今回の改築で天井画と壁画の修復再生を担当した美術史家、アンナ・ファン・グレーフェンシュテインさんの言葉である。改築後、美しく蘇ったカウペルスの館内装飾。それは、構造(建築)と空間(インテリア)の統一感、そして建物全体のロジックを再生するものであった。

芸術を見せる美術館であり、歴史を語る博物館でもあるという同館には、80の展示室があり、800年分のオランダの歴史を伝えている。各作品を種類で分類せずに、時代ごとに見せることで、その時々の文化背景や風潮などがわかるようになっている。

近代の展示場には、1918年に製造された飛行機や、アウシュビッツ強制収容所で着られていた縦縞の囚人服、その持ち主の家族アルバムなども並んでいた。その全てが重要な時代の証人であり、同世代の作品が生まれる背景を物語る。

デ・スタイル派の作品の数々、1960年代に登場したスキポール空港の案内板(トータル・デザイン作)、そして先鋭の若手デザイナーヨーリス・ラールマンの「ボーンチェア」のプロトタイプや模型などは、ダッチデザインファンは必見だ。
どの作品も、一度は見たことがあるものばかりだったが、時代を意識して一望することで、これまでとは違った側面が見えた。

1968年に作られたフェルディの「Wombtomb」(フェイク・ファーの棺のようなオブジェ)を見ることができたのは、私にとってはこの日の最大の収穫だった。フェルディは、私がアートアカデミーの学生だった頃から大好きなアーティストだったが、彼女に対する評価は非常に割れていることも知っていた。担当の学芸員に話を聞いてみると、「この作品の展示を巡っては大きな論議がありました。しかし、1960年代最大のムーブメントであったヒッピー文化を象徴するには、彼女の作品が最適であると考え展示しています」との答えだった。

アートやデザインで綴る、800年のオランダ史。
アムステルダムに来るチャンスがある人は、是非!
新しくできたアジア館には、対の仁王像や、出島の模型もあります。