即位式を飾った花

即位式を飾った花

去る4月30日、天皇陛下や雅子様を始め、世界各国君主が一堂に会したオランダ国王即位式。その翌日と翌々日、会場となった新教会は、式のセッティングをそのままに一般公開された。5月2日の早朝、一般プレスのための公開時間が設けられたので見学してきた。


教会内のフラワーアレンジを手がけたクサンダー・ザイルマンス氏もいらしていて(下の写真中央)、園芸業界誌のジャーナリストたちの取材を受けていた。

「このような行事の場合は、さまざまな点を考慮しなければなりません。まずは、この教会の雰囲気にマッチすること。テレビカメラを通して世界中で見られるということ。そして、世界各国から国賓が集まるため、ある国で特定の意味やイメージを持つ色を避けることなどです」とザイルマンス氏。

「例えば教会の壁は白っぽいので、白い花を使えば、建物との統一感が出ると思うかも知れませんが、壁の色は正確に言えば砂色。所々に白を混ぜるとそこだけ色が抜けたように見えてしまうし、テレビカメラを通しすとそれは非常に目立ちます。その他、赤のように”情熱”とか”情愛”などイメージが定着している色や、タイで黄色が特別な色であるように、ある国で特定の意味を持つ色も避けます。その上で、男性国王の即位式であることから、重厚なイメージ、さらに春という季節感を大切にしました」と説明する。
これらの花を手配をした業者の担当者が、「普通は、花は蕾の状態で購入しますが、今回は4月30日に最も美しい状態となるように花を発注し、咲き具合を見極める必要がありました。準備期間は非常に短く、おまけに大量に仕入れる必要があったため、花ハンティングは至難の業でした」と振り返った。

クサンダー・ザイルマンス氏は、王室御用達のフラワーアーティストである。
ユリアナ女王とベルナルド王子の葬儀、新国王の弟フリーゾ王子の結婚式のフラワーアレンジメントも手がけた。

今回使用された花は、バラやチューリップ、グロリオサなど、合計6万本。
まだまだ数日間はこの美しい状態を保ったであろう花々は、この日の晩に撤収された。ザイルマンス氏は、自らの大作をしみじみと眺めながらも、「(今夜撤収してしまうのは)残念ですが、命が短いのが花ですからね」と満足そうだった。