アムステルダムで執り行われた、仁王像の開眼供養

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アムステルダムで執り行われた、仁王像の開眼供養
2013年10月13日。
4月にリニューアルオープンしたアムステルダム国立美術館で、アジア館の目玉である仁王像の開眼供養式が執り行われた。
厳かな儀式の場に様変わりした展示ギャラリーに、鮮やかな装束をまとった京都大覚寺の僧侶の読経が響いた。

その後、中庭で護摩祈祷が予定されていたが、あいにくの雨のため、急遽館内でも行える火を焚かないご祈祷に変更。アトリウムに集まった大勢の来館客に見守られる中、神聖な火に変わって、花びらを象ったカラフルな色紙が宙を舞った。
学芸員のメノー・フィツキさんは、式後のレクチャーの中で、仁王像について次のように語っていた。
「この美術館の仁王像は14世紀に作られたもので、かつては島根県の岩屋寺を守っていました。寺はすでに廃寺になっており、像はアートディラーから購入しました。この像があった場所を見るために私は岩屋寺を訪れましたが、そこで目にしたのは、門番のいない朽ちた仁王門でした。その側壁には、像を取り出すために開けられた大きな穴がそのまま口を広げていました。この光景を見たとき、私は何とも言えないメランコリーを感じ、悲しくもなりました。我が美術館の仁王像は、かつてはここが住処だった・・・そして芸術品とはなんとも儚く、どんなに素晴らしい作品も、自らを守る術は持ちあわせていないことを改めて認識しました」
芸術への愛情、そして信仰への敬意に満ちた、印象的な言葉だった。そして、この美術館が2体の像の新たな住処となるようにという願いを込めて、この開眼式を行ったのだと説明した。

10年に渡る美術館大改築工事から再開までの終始を追った「新しい国立美術館」という長編ドキュメンタリーが、リニューアルオープンの時期に合わせてテレビでも放映された。その中には、再オープンのメドも立たなくなるほど工事が行き詰まった頃に撮影された、メノーさんのインタビューもあった。
「仁王像にはリスペクトが必要だ。真っ暗で、訪れる人もいないこんな場所に置いておくなんて、彼らの本来のあり方じゃない。わざわざ日本から来たのにこんなことになってしまうなんて、僕も少なからぬ責任を感じている。いつか必ず、どんなことをしてでも、最善を尽くしてこの像を美しく展示する・・・そんな思いから、夜中に目が覚めてしまうこともある・・」
とても申し訳なさそうな面持ちで、倉庫に置かれた仁王像の胸に手をあててこう語っていた。
この印象的なシーンを思い返しながら開眼供養やご祈祷を見ていたのは、おそらく私だけではなかったはずだ。
(1枚目の写真の一番左、2枚目の写真最前列左に座っているのがメノー・フィツキさん)
(*2021年9月、内容は変えずに少しだけ文章を修正しました)








