Vincent van Goghが描いた風景

去年の夏、ゴッホの足跡を辿る取材旅行に参加した。
雑誌PENの2016年11月1日号「ゴッホ、君は誰?」という特集のため。今更ながらだが、その時の写真をアップしてみる。
この特集は、普通のゴッホ特集とはちょっと切り口が違う。バックナンバーは購入できるはずなので、ゴッホ好きの方は是非!

このルートをまわるのは2度目だが、一番印象に残ったゆかりの地は、前回同様フランスのオーヴェール・シュル・オワーズだった。
終焉の地だけあって、彼のスピリット(あるいは亡霊)がそのあたりを彷徨っているような気配。ゴッホ兄弟が並んで眠る墓地が近くにあるせいかもしれない。

ゴッホは、弟らと交わしたたくさんの書簡の中で、作品や技術、テーマについて詳細に説明している。それが本やTVなどで広く紹介されているため、この画家については随分とたくさんのことを知っているような気になっているが、いざ色々調べ始めると、やはり発見は絶えない。

今回インタビューさせていただいたウィレム・ファン・ゴッホさん(ヴィンセントの弟テオのひ孫)の言葉を借りれば、ゴッホの絵は、人間の感情のとても深い部分を掘り下げて探求し表現しているから、見る側のその時々の心持ちで見え方も感じ方もかわる。絵から受け取るメッセージさえ、異なってくる。


実はこの取材旅行が始まって早々に、私はカメラを抱えたまま頭からすっころんでしまった。
カメラが壊れず、歯が折れなかったのが不思議なくらい派手な転倒で、口の中がざっくりと切れた。
旅行中は顔の半分が倍の大きさに腫れ上がり、いい年してとにかく情けなかった。周りの人に優しくしてもらうほどに、その情けなさは倍増した。
もちろん、たかだか転んだだけのことと言えばそうなのだが、ひたすらワクワクと楽しかった前回の取材旅行とは全く違う心持ち。
ゴッホの絵も彼が見た景色も、前回とはずいぶんと違って見えたのは、そのせいだったのかもしれない。
これも、けがの功名、ということにしておこうと思う。

© kiyomi yui / studio frog