Gay Pride 2011 (from update-NL)
8月5〜7日、毎年恒例の「ゲイ・プライド」がアムステルダムで開催された。
この世界屈指のゲイの祭典は、今年で16回目。世界各国から大勢のゲイが集まり、その社会的立場の向上を求めるとともに、純粋にフェスティバルを満喫する。
そのハイライトは、なんといっても中日に行われる「カナル・パレード」だ。
今年のパレードのテーマは「All together」。80の団体や個人が、思い思いに装飾した豪華なボートに乗ってパレードに参加した。
防衛省のボート
今年、一番話題を集めたのが、防衛省のボートだ。
防衛省がこのパレードに正式に参加するのは初めて。同性愛、トランスセクシュアルの軍人たちが制服を着てパレードに参加することを、防衛省が初めて許可したのだ。
ただひとつ条件つき。「ユニフォームを着ているのだから、それに相応しい行動をするように」とのこと。だから思い切りはじけて、ダンスしたりしてはいけなかったのだそう。
それでも、初めて同性愛者、トランスセクシュアルの軍人として人々の前に登場した彼らの誇らしい笑顔は感動的で、「勝利のオーラ」とも呼べる神々しさを感じた。
周りで見ていた人たちも、彼らのボートを目の前に「鳥肌がたつね!」「かっこいいね!」と率直な感想を交わし合っていた。
下の写真の中央に写っている東洋系の人は、アメリカ人の元軍人。今年の防衛省のパレードに招待されて参加している。聞けば彼は、アメリカの軍で働いていた時に自分がゲイであることを公にしたため解雇されてしまったのだそう。「制服を着てこのようなフェスティバルに参加できるなんて本当に素晴らしいこと!」と感激していた。
世界で初めて同性愛の結婚を執り行ったアムステルダム
妊娠中絶、安楽死などに続いて、社会的、政治的な長い長い闘争の末に誕生した新しい人権のひとつが同性愛者の合法的な結婚だ。
ここアムステルダムで世界初の同性愛者の結婚式が執り行われてから、今年で10年。表面的には、同性愛者やトランスセクシュアルの市民権は安定したものと見られがちだが、いわゆる「ホモフォビア」(同性愛者に対する偏見や差別)による傷害事件は増加している。受難の中で確立した革新的な法律の原点に立ち戻り、自由民主国民党、民主66党ほかの各党が「ホモ差別を厳しく罰す!」などのプラカードを抱えてパレードに参加した。
宗教的な理由などから、公務員には同性愛者の結婚を執り行う公務を拒否する権利があるという解釈もあるが、公務を拒否する公務員は辞めさせるべきという見方も強く現在論争を呼んでいる。そんな背景から「公務を拒否する公務員を拒否せよ」というプラカードや垂れ幕も多く見られた。この国では、メディアで堂々と同性愛者を批判する政治家には未来はない。
統計によると、オランダ国民の6%がホモセクシュアル。彼らの自殺率はヘテロの5倍。約70%のホモたちが差別から傷害事件まで、何らかの被害を受けている。
学校にも様々な困難を抱えている同性愛の学生達がいて、彼らとその仲間たちもパレードに参加。同性愛、トランスセクシュアルに関する情報を学校で提供することを義務づけるよう訴えた。
文部文化科学大臣は、「学校でそれらの情報を提供することは非常に重要。だがそれは各学校が判断して行うべきこと」として義務づけはしない意向を表した。
約30年前に「ゲイ新聞」が誕生してから、彼らの社会的地位の改善を求める人権運動は本格化していった。その長年の努力の末に、近年ようやく定着し始めたように見える「差別のない社会」だが、不景気や治安の悪化などさまざまな要因の中で揺らぎ続けているのが現状だ。
彼らの人権運動に賛同するのも批判するのも個人の自由だが、
少なくともそこで生まれる論議や発言は公正なものでなければいけないし、
その公正さは、「法」によって守られなければならない。