Ajax-AZ
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2012年1月20日
アムステルダムのサッカーチームアヤックス対アルクマールのチームAZの特別な一戦が、アヤックススタジアムで開催された。
なにが特別だったのか・・。
観戦できるのが、小学生と引率者だけに限定されていたことだ。
警備の事情から、スタジアムは半分のみ使用。
集まった2万人の子供が一斉に叫ぶ様子は壮観の一言。
いつもの試合とは異なる、無邪気な熱気が溢れていた。
観客は小学生限定(+保護者)
昨年12月21日のこと。
KNVBカップの3回戦アヤックス-AZ戦の試合中にファンがピッチに乱入して、AZのゴールキーパー、エステバン・アルバラードに襲いかかった。
驚いたアルバラードがこの男に二度蹴りを入れると、「試合中に暴力をふるった」として、審判がアルバラードにレッドカードを提示。その判定に怒ったAZの監督が、選手たちを引き連れてピッチを降り、試合は中断。この再試合として行われたのが今試合である。
暴力や試合放棄に対するペナルティとして、オランダサッカー協会はこの試合の観戦を小学生と女性だけに限ると発表。その後の調整の結果、観戦資格を小学生、そして子供6人に対して引率者ひとり(性別を問わず)に与えられるとした。
めでたく引率の役をひき受けることになった父兄は大喜びだ。
キックオフは平日木曜日の午後2時半ということで、観戦する小学生達は学校を「さぼって」来ている。だが、おそらく2度とないこのユニークな機会に際して、アムステルダムやアルクマール周辺の教育機関と小学校は、親の署名が入った正式な休暇届けを提出すれば、観戦のために小学校を休むことを特別に認めた。
訪れた子供達のほとんどが、アムステルダムとアルクマールの小学生。ほとんどの子どもが、自分の街のチームを応援した。
観客席は、通常のようにチーム毎にサポーター席を分けず、両チームファンは入り混じって観戦。「普通の試合でそんなことをしたらたちまち乱闘になるね」とは、警備のスチュワートの言葉。そして「今回はスタジアム半分しか使っていないのに、歓声の音量は大人で満場になった時の2倍。大人のサポーターの歓声は地鳴りのような低音だが、子供達のは空から降ってくる感じ。うるさいけど、かわいいなー」と目を細めた。
この特別な試合には、病院生活が長い闘病中の子供達も大勢招待されていた。
車イスの子供達も、しばしの間病気のことは忘れてピッチ横の特別席で大勢の子供達の熱気の中、共に観戦していた。
小学生に社会のマナーを教える、よい機会に

昨年末、オランダサッカー協会がこの試合の観戦を小学生と引率者に限ると発表した時から、サッカーファンのパパや先生たちによる壮絶なチケット争奪戦がはじまった。
チケットは、学校などの団体単位で、アヤックスのHPから申し込む。その中からくじ引きで当選した団体がめでたく観戦できるということで、結果発表を待つ子供達はドキドキ。その様子はニュースでも報道された。自分の学校がはずれてしまったとわかると、ぽろぽろと涙をこぼして悔しがるサッカー少年や、がっくりとうなだれるお父さんの姿も。

一方当選した学校は、早速バスをチャーターしたり、シュプレヒコールを練習したり、垂れ幕をつくったりと、準備で大忙し。
そんな中で、観戦する学校では「なぜ、今回子供達が観戦できるようになったか」という12月のピッチでの暴力事件についてのいきさつを説明し、暴力はいけないこと、そしてどんな時でもリスペクトをもって人と接することなどを教えた。
観戦中も、自分のチームを応援するために歓声をあげるのはよいけれど、相手のチームを罵倒してはいけない、などのルールを決める学校もあった。
今回の試合は、サッカー観戦を通して子供達に社会のマナーを教えるよい機会になった上に、堂々と学校をさぼって友だちと観戦した子供達にとっては、一生忘れられない思い出になったに違いない。
「今後もこのような機会を作りたい」と言うオランダサッカー協会。そのなんとも粋な今回の計らいには心から拍手を送りたい。






